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『人権侵害ゼロへの誓い』の提案

鹿児島県知的障害者福祉協会

新しい時代の福祉が目指すもの

 社会福祉基礎構造改革の理念は、支援費制度という形の中で次第に具体化されつつあります。
福祉の世界にも契約行為が導入されるようになり、福祉サービスの利用を「措置」から「契約」
に切り換えて、自分でサービスを選んで決めるという利用者本位の制度として個人の尊厳を尊重
する考えに立っています。
 施設においても、利用者との間で、新しい関係を築くことが求められています。
 

現状

 自分で判断し決定する能力が不十分な人たちが、契約社会のもとで、自己選択・自己決定がで
きるようにサポートし、安心して自立生活を送るための権利を擁護していく体制の構築が必要なこ
の移行期の現在、実態はどうなっているのでしょうか。
 実際は目に見える形で推進されているとは思えず、残念なことに本協会が昨年行った実態調査
の結果では、「人権侵害」の課題は払拭されているとは言い難い現状にあります。
 
◎施設内人権侵害防止に関する提言◎
(施設内人権侵害防止対策特別委員会1ページより抜粋)
 
 利用者に対する体罰等を問うアンケート調査項目の(1)体罰はしていないという回答がいずれも
99%を超えており(アンケート調査結果報告書参照)、体罰等という重大な人権侵害行為は限りなく
ゼロに近いことが明らかになりました。しかしながら、わずか1%未満とは言え「殴る、蹴る」
「長期正座、直立」させる等の行為が重大な人権侵害事件に発展しかねないということを、施設長
をはじめとする施設職員は自覚して、人権侵害行為を『完全にゼロ』にしていく不断の努力が求め
られています。
 
 他にも、マスコミ等の報道にも不祥事の散見を認めることが出来ます。
とりわけ施設職員による利用者への体罰、性的虐待、利用者の財産侵害等は刑法にも抵触する卑劣
な手段でもあり、先達が営々と築いてきた障害者福祉・施設の信用を失墜させるばかりか、真摯に
取り組む多くの施設職員と職場を汚す行為でしかありません。

知的障害者に対する人権侵害の特徴と背景

 非常識と思えるこれらの施設による人権侵害が起きる背景として、被害者である障害者本人から
不満・批判の声が発せられないこと、そしてこうした現状をチェックし、障害者の権利を擁護する
制度的保障が進んでいないからと思います。

対策の一つとして

 前出の施設内人権侵害防止対策特別委員会は、提言の結びとして、「施設における人権擁護の推
進に資することを願うと同時に、施設長をはじめとする施設職員は、障害を持つが故に援助を必要
としている人たちの生活を支えていくきわめて重要な責務を負っているのだという強い使命感と責
任感、そして専門職としての自信と誇りを持てるような取り組みと、さらに徹底した人権擁護の活
動を推進されることを期待する。」としておりますが、このことは、同時に、日常的に障害者と関
わり、自己決定・自己選択を支える実践にあたっている施設職員の関わりのありようと専門性の質
が更に問われることを示唆しております。
 障害が重く、具体的なコミュニケーションや意思疎通が困難であったとしても、常に利用者の意
思を問う働きかけを怠らず、その利用者の状態や反応の中で意思を確実に受け止める「関係性」を
保障することが、権利擁護になると思います。
 人権尊重に完成された姿はなく、私たちの永遠のテーマになりますが、様々な不祥事に学び、そ
の思想を習得しながら、私たちの日本知的障害者福祉協会は、「倫理綱領」と「施設職員行動規範」
を打ち立てるにいたっています。
 しかし繁忙な業務の中では、その「気づき」も押し流されることがあり、人権尊重の理念や精神
を意識化し、日常的な関わり・支援の中で確認と具体化、定着させる場面こそが必要と思います。
 老人福祉の世界が、その関係性を大切にし『身体拘束ゼロへの誓い』を行ったように私たちも利
用者との関係性を見つめなおし、公的な拘束を掲げることが、不祥事の再発を抑制し、専門性の礎
になるものと考えます。
 社会福祉のその前提となる「利用者の人権の尊重・遵守」が全うされないところに、いかなる福祉サービスも成り立たないことを深く認識し、鹿児島県の知的障害者福祉施設に係わる全職員の中
で、この誓いが醸成され堅持されるよう『人権侵害ゼロへの誓い』を提唱します。
 
人権侵害ゼロへの誓い
鹿児島県知的障害者福祉協会宣言
 
 桜町学園職員は知的障害者の自由と尊厳を守り、自立した生活を支援するため、
あらゆる努力を傾けるとともに、知的障害施設における人権侵害ゼロの実現を目指す
ことを宣言します。
 
1.私は(財)日本知的障害者福祉協会の「倫理網領」「知的障害施設職員行動
規範」および(福)愛光会の「倫理網領」「職員基本行動基準」並びに桜町学園の
「職員基本行動基準」を遵守し、体罰、虐待、財産侵害等をはじめとする人権侵害行
為を決して行わないことを心に近い、署名を行います。
 

2.施設内に「人権侵害ゼロへの誓い」の宣誓書を掲げ施設利用者や家族と約束
します。
 
 
3.人権侵害ゼロを実現するため、施設職員としての人格を高めるとともに、
支援技術の向上に努めます。
 
 
4.人権侵害防止に必要な人的・物的環境改善を推進します。
 
 
※上記宣言について、桜町学園の職員は全員署名捺印しています。
 
令和4年4月1日
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